20周年記念公演を振り返って

本日、先日の公演の反省会が開かれました。

3週間ぶりに会う、顔、顔、顔・・・・・・

何だか、また稽古が始まりそうな気もします。

恒例のTシャツへのサイン会。役者たちのいい笑顔を見ながら、ああ、やっぱり終わってしまったんだなあ、と、淋しさと、安堵感と、解放感が入り混じった複雑な気持ちになりました。

20周年のプレッシャーの中、スタッフも役者も大変な日々でした。

兎に角、20周年にして、初めてのことが多かったのです。

まず、脚本。地元ひたちなかの歴史を取りあげ、リアルなものを書いたのは、初めてでした。

古代と現代を往き来する書き方も初めてでした。

観てくださるお客様によって、感じるもの、涙する場面も様々であろうというようなストーリーの設定も初めてです。

この台本で行けるのだろうか?これで良いのだろうか?そんなことをここまで悩んだのも初めてでした。

上演台本まで8稿まで書き直したのも初めてです。

役者全員が、一人何役もこなすのも初めてです。

衣裳の数の多さ、着替えの時間の無さも無二のものでした。

自分の衣裳を管理し、早替えの工夫をし、出とちりを無くす努力だけでも大変なものだったはずです。

同じ人が複数の役で出て来て、観ていてわかりにくくないだろうか、と、これも心配の一つでした。

古代の埴輪職人ふとしの少年期から青年期、壮年期を3人でつないで演じることも、現代の主人公成一を二人がつないで演じることも、更にこのふとしと成一を同一人物が演じるというような役の設定の仕方も初めてのことです。

わかりにくくならないだろうか?重ねて心配でした。

客演の方々のスケジュールの調整も大変で、全員揃っての通し稽古も少なく、役者が稽古場で様々なことを感じとれる様な稽古が非常に少なかったのです。そんな状況の中でも、役者一人一人が、それぞれの場面や役に何を求められ、表現していくべきかを、組み取り、考え、役を作っていってくれました。

道具も過去最多ではないでしょうか。

その出し入れをしてくれた舞台そでのスタッフたちも、本当に良くやってくれました。5人で、あれだけの道具を出し入れしてくれていたのです。

上原自身に余裕が無く、作品について語り、役者と向き合う時間もこれほど少なかったことはありませんでした。その分、役者一人一人が、埴輪の時代について深く調べ、作品の舞台になっている場所に足を運び、役者どうしで語り合い、作品を作り上げていってくれました。

反省会の後、大人の役者のY君に言われました。

「先生のカレーが食べたいんだよな。しばらく食べてないから。」

そう言えば、いつもなら稽古期間中に何度も大鍋でカレーを作り振る舞うのですが、今回は、それも出来ませんでした。

我が家の大テーブルをみんなで囲んで盛り上がるのも、クリエの風物詩の一つだったのです。それが出来なかったのも、初めてです。

それなのに(カレーを1回も食べていないのに)、役者たちは本当によくやってくれたと、ここまで育ってくれた役者たちに、改めて感謝の気持ちでいっぱいになりました。

そして、近々、「カレーを食べる会をやるよ~!!」と連絡したいと、思いました。

初めてづくしの20周年で、沢山の不安を抱えて幕を上げましたが、多くのお客様から、「わかりやすかった」とおっしゃって戴きました。

「良かった、すごく良かった」との言葉を聞く度に、「ああ、良かったと言って戴けて、本当に良かった」と何度も何度も胸をなでおろしました。

ふと気づけば、月は9月に変わり、稲は色づき穂を垂れ、空は高く、残暑の中にも秋が静かに訪れ始まっています。

この反省会で「埴輪ろまん」は終了、運営委員会は解散になりました。

明日は月曜日。それぞれの日常が始まります。