風のコンチェルト ~ひたちなか公演~

スタッフ

作・脚本:上原久栄
音楽:後藤知明
演出:大滝順二
振付:梅原美穂、西林素子
照明:成瀬一裕(あかり組)
音響:武田朋子
美術:大滝順二
衣裳:宮部詩都賀
ヘア・メーク:高久重則(エルベ)
舞台監督:樽真治

あらすじ

お話の舞台は一昔前のとある田舎町。
今年、義務教育を終えるニースは、卒業後、女学校へ進学するかどうかで、両親ともめています。
そんなニースが大好きなお気に入りの場所。それはロンおじさんが営む牧場の、小高い丘の上にある「大きな古い木の下」です。
ここは、向こうの森から牧場を渡ってやってくる優しい風が通り抜けていきます。
何か気持ちがすっきりしなかったり、嫌なことがあったりすると、ニースはここへやってきます。風は、答を出してくれる訳ではないのですけれど、 ここに来ると、気持ちが落ち着いたり、心の整理がちょっとついたりするみたいなのです。
「私はどうしたらいいのかしら」そんな思いで大きな古い木の下にやってきたニースは、目を閉じて、静かに流れる風の歌を聴きます。

制作こぼれ話

みごとな木

今回も舞台の観どころはたくさんありました。
中でも、この物語の象徴的な存在である木は見事な演出効果を出していたと言えるでしょう。
仕込みの段階では、透き通ったクリーム色の布が1枚、舞台の天井から吊られているだけでした。

それが、何ともいえない美しい色に染まるのです。仕掛け人は舞台照明家の成瀬一裕氏。ここで何色などと書くことはやめておきましょう。 折角の舞台のあの色合いが伝わらないと思いますので。

幕が上がったときは、一体この布は何を表しているのでしょう、と、思う方も多かったはずです。それが、 風の精の登場のときは木の葉が照明によって舞台いっぱいに描かれ、そして子供たちが「木になってみようよ」と、 木の周りを囲みます。こうして’布’が’木’になるのです。見事なまでの大滝順二氏の演出と成瀬一裕氏の照明とのコラボとでも言ったら良いのでしょうか。

美しい舞台空間

ロンおじさんの牧場の大きな古い木の下を通り抜ける風の気持ち良さ。 それを舞台という空間で、どう表現するのか。

昼間の風、夕方の風、朝もやの中の風・・・・・

風の精という設定、シンプルでかわいらしい衣裳、風の精の優しさがあふれる振付、そして空間を染める照明の美しさ。
勿論この空気感を大切にした美しい音楽の存在も大きい。
演出はそれら全てをまとめて、一つの形にしていく。

登場人物

〔この物語の主人公ニースとその友だち〕

 

 

 

ストーリーの中心的な存在で、将来について漠然とした不安をかかえながら、それぞれ自分の生き方を模索している。

〔よく遊ぶ男の子たち〕

 

 

 

自然の中で遊びながら、自然の偉大さ、生命の尊さを学んでいく。

〔ニースの両親、他の母親たち〕

 

 

 

どこにでもいそうな大人たちだが、子供たちと同じ風に吹かれてみることで、大切なことを思い出す。

〔牧場の大きな古い木の下を通り抜ける優しい風の精たち〕

 

 

 

心地よい風で人々を包み込む。

〔風と戯れる生命感あふれる元気いっぱいの葉っぱの精たち〕

 

 

 

自然の持つエネルギーを周囲に振りまく。

〔魔界厄介もういいかいの生き物〕

 

 

 

これは、大人たちの心の中に巣食う生き物。
この生き物が登場すると、舞台の色合いが一変する。今回の舞台の観どころの一つ。

〔木の精〕

 

 

 

大きな古い木に棲み、ここに生きるものすべてを見守る。

*誰もが経験する子供から大人になっていく過程での悩みや迷い。それを見守る大人はどうあるべきか。
広大な自然を舞台にさわやかに描いています。